■はじめに:同じ一歩でも違いがある
「なんであの子は、あんなに速く走れるんだろう?」
そう思ったことはありませんか?
走りの速さにはさまざまな要素がありますが、実は“足の接地”が大きく関係しています。
同じように腕を振って、同じように足を動かしていても、「どこに」「どうやって」足をついているかでスピードや安定性が全く違うのです。
今回は、走りの“地面との付き合い方”=接地のコツについて、子どもにもわかりやすく伝えられる方法をお届けします。
■ 足の接地って、何が大事?
「接地」とは、走っているときに足が地面に触れる瞬間のこと。
このとき、力を地面にうまく伝えられれば、前への推進力が生まれます。
でも逆に、間違った場所・タイミング・力加減で接地してしまうと…
• ブレーキがかかる
• 体が浮いてしまう
• エネルギーが逃げてしまう
といった、もったいない走りになってしまいます。
■ よくあるNG接地のパターン
以下のような接地のクセは、スピードダウンやケガの原因になります
• 短距離でのかかとから接地 → ブレーキがかかる・前への力が逃げる
• 体より前や後ろで接地 → 着地の衝撃が大きく、リズムが乱れる、フォームが崩れる
• 膝が伸びきったままドスンと着地 → クッションが効かず、疲れやすい、反発がもらえない
技術うんぬんよりもまず、身体の感覚や姿勢の問題からきていることが多いです。

■ 速い子の接地はここが違う!
走るのが速い子は、無意識にこんな接地をしています:
• 足が体の真下(おへその真下)に落ちるように着地
• 地面を強く蹴るのではなく、上から“押す”ような感覚
• 「タンッ」と軽く・素早く・一瞬で抜けるような接地
特に大事なのは、「どこでつくか」だけでなく、「どんな感覚でつくか」。
「接地音が静か」「着地が滑らか」「次の動作につながる」
──こうした特徴は、接地が“うまくできている”証拠です。

■ 「足裏のどこで接地するか?」で走りが変わる
接地は“場所”によっても大きな違いがあります。
以下は代表的な接地タイプとその特徴です:
▶ 子どもにはどの接地がいい?
・スプリント系の練習や運動会の徒競走なら…
→「トゥ接地~フォアフット接地」の感覚を育てる
・長距離などのマラソン大会なら…
→「フラット接地~ヒール接地」
・体づくりや安定したフォームを学ぶ時期なら…
→「フラット接地」をベースにトレーニングするのがおすすめ
※いきなりフォアフットを強制すると負担がかかりケガのリスクもあります。
無理に強制しないで段階的に移行することが大切です。
自分の走る距離や種目に応じて接地を変えていきましょう!!

接地タイプ メリット/デメリット 向いている場面
トゥ 加速に優れている/疲れやすい スタートダッシュ
フォアフット 前足部反発が強い/ふくらはぎに負担大 短距離スプリント全般
フラット 足裏全体怪我が少ない/推進力はやや劣る 長距離、フォーム作り段階
ヒール ケガしにくい/ブレーキになりやすい ウォーキング、ジョグ
■ 靴の裏を見れば“接地のクセ”がわかる!
感覚だけでなく、「靴の裏」を見ることで客観的にチェックすることもできます!
減っている場所 接地の傾向 備考
つま先のみ トゥ接地 つま先だけ減ることはあまりない
前足部(親指下) フォアフット接地 多くのスプリンターが減っている
足裏全体 フラット接地 意外と減っていることに気づきにくかも
かかと ヒール接地 長距離ランナーは減っているはず
練習用の靴であれば、歩き方も含まれていますのであくまで参考程度に・・・
大会用のスパイクの場合は要チェックです!!
子どもたちに「この靴、どこが減ってる?」と聞いてみるのも楽しい気づきになります。

■ 家庭や練習でできる接地トレーニング
✅ 音を使ったチェック
→ 「タンッ」と軽く接地する音を意識して腿上げをしてみましょう
✅ その場ラン・スキップ
→ 足を“落とす”感覚、“跳ね返る”感覚を育てましょう
✅ 動画や線上での接地確認
→ 足が真下でついているか、どこにズレているかを確認しましょう
■ 声かけの工夫
• 「足を前に出すんじゃなくて、下に落としてごらん」
• 「ドスンって音しないように、タンッて感じで」
• 「つま先じゃなくて、親指の付け根あたり着地してみようか」
などの感覚を引き出すような声かけが、子どもの理解を深めてくれます。
保護者の方への注意点としては、子どもたちは一生懸命に運動をしています。
難しい声掛けは学習の邪魔になることもあるので、温かく見守ることも大切です。
■ まとめ:速さは“地面との関係”で決まる
どれだけ脚を速く回しても、
どれだけ腕を大きく振っても、
足の接地がズレていたら、速くは走れません。
「どこでついているか?」「どうやってついているか?」──
そこを変えるだけで、走りの質は一気に変わります。
まずは靴の裏を見て、自分の接地を知るところから始めることが大切です。
子どもたちに「地面との付き合い方」を教えていきましょう!
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