科学でわかる“反復と頻度”の効果
■ はじめに:家庭練習は「どれくらいやれば効果が出るのか?」
「子どもに家でも練習させたいけど、どのくらいやればいいのかわからない」
「やってはいるけど、これって意味あるのかな?」
そんな疑問を感じている保護者や子どもたちは多いと思います。
結論から言うと——
✅ 効果的な家庭練習は、1日20〜30分を週3回以上
✅ 内容は「1つの動作を30回以上反復」が目安
✅ 継続期間は最低でも3〜4週間から実感が出始める
これは感覚的な話ではなく、運動学・神経科学の研究にもとづいた、確かな根拠があります。
■ なぜ「反復と頻度」が重要なのか?
スポーツの動作は、筋肉だけでなく“神経”の記憶でもあります。
たとえば走り方、ジャンプのタイミング、フォームの使い方などはすべて「脳と身体の回路」によって動かされています。
この“運動の神経回路”は、一度やったくらいでは身につきません。
繰り返しの中でしか覚えてくれないんです。

■ 科学的根拠①:神経系が記憶するには「300〜500回以上の反復」が必要
運動学の教科書(Schmidt & Lee, 2011)によると、
1つの動作を習得するには、最低300〜500回の反復が必要とされています。
つまり、1日30回ずつ繰り返したとしても、10回以上の練習(=3〜4週間以上)は必要だということ。
「やっても意味あるの?」と感じる前に、必要な量に達していないことがほとんどなのです。
■ 科学的根拠②:頻度が空くと“忘れる”のも早い
神経系の記憶(=運動記憶)は、48〜72時間で弱まり始めるという報告があります。
→ だからこそ、週に1回やるだけでは“思い出す作業”の繰り返しになってしまうのです。
反対に、週3回以上の練習をすることで、「忘れる前にまた覚える」を繰り返すことができ、定着がどんどん進みます。

■ 科学的根拠③:分散して練習した方が効果が高い
ある研究(Brady, 2004)では、
• 「1日でまとめてやる(集中練習)」より
• 「毎日少しずつやる(分散練習)」方が、技術の定着率が高い
ということがわかっています。
つまり、1日20分でも、3日に分けてやる方が効率がいいのです。

■ じゃあ家庭でどうすればいいの?目安まとめ
項目 推奨目安 根拠・理由
時間 1日20〜30分 集中力を保ちつつ、神経に十分な刺激を与える時間
頻度 週3〜5回 神経が忘れる前に刺激を重ねる
回数 1つの動作あたり30〜50回/1日 習得に必要な刺激量(300〜500回の分割)
継続期間 3〜4週間〜 神経適応が起こり始める最低期間
■ ポイントは「短くていいから“コツコツと”」
家庭での練習は、長くやる必要はありません。
大切なのは、「今日はこの動きを30回だけ」と決めて、
集中して取り組むこと。そしてそれを“週に何度か続ける”こと。
特に小学生や中学生は、30分を超えると集中が切れがち。
それなら、「短く・こまめに・正しく」やるほうが、ずっと効果的です。
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■ 覚えるまでやる——それが正しい
「え?でも、回数なんか気にせず“できるまでやる”のが一番じゃないの?」
その感覚、実は正しいです。
ただし、
• 何回やれば“だいたい身につくのか”の目安を知っていれば、
• 子どもや保護者が「何回やればいいの?」「もうやめてもいいの?」という迷いを持たずに済みます。
その意味で、科学的な目安を持っていることは大きな武器になります。
■ まとめ:週1回では足りない。家庭でこそ差がつく。
週1回の練習だけでは、記憶も感覚もなかなか積み重なりません。
でも、家庭で週3回、たった30分やるだけで
• 動きが変わる
• 感覚がつかめる
• 自信がついてくる
ということは、現場で何度も見てきました。
ぜひ、「短く・集中・反復」を意識して、家庭練習の質と頻度を高めてみてください。
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